時間旅行というSFテーマを用いた切ない話

再読。
宮部作品を久々に読み返してみたらおもしろいこと。
この作品の肝となっている時間旅行というSFでも多く書かれているテーマが印象的でした。
歴史が先か、人が先か。
この作品における時間のとらえ方は、結構初めて見たような考え方ではあったんですが、かなり好きです。
人は大きな枠組み内の出来事を少し変えられるけど、枠組み自体を変えることは出来ない――
要するにスキーマは変えられないけどそこで流通する情報は書き換えることが出来る。
まあ書き換えたとしても、代用品なんだけどねって話。
そういったSFテーマのすばらしさもさることながら、主人公の切ない恋にひどく心打たれる。
最後の手紙を読んだ後の彼の問いかけは読んでて泣きそうになった。
つまるところ僕は宮部作品のなかでもこの『蒲生邸事件』という作品はBEST3ぐらいに入るくらい好きなんだろうなあというお話。

残り27冊

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