色々

川端裕人『夏のロケット』
ロケット作りに魅せられた大きい子供たちのお話(語弊がある感じだ)
宇宙を目指すっていうストーリーに弱いんで、すごくこういうの大好きです。
もう大好きです。ただ、僕自身の傾向としてはロケット作りより宇宙に行きたいっていう宇宙飛行士ものの方が好きです。
冒頭で誰か行ってたけど。

門井慶喜『おさがしの本は』
図書館員(志望)、特にレファレンサー歓喜な一冊。
もう図書館っていうだけでノックアウト。
なんかもう共感しまくり。
図書探求ミステリーなんてどんな需要だよって感じですけどね。ていうかミステリじゃなくて図書館員のお仕事小説。
図書館戦争? それよりも全然リアリティがあるさ!

京極夏彦鉄鼠の檻
再読。やっぱり京極堂シリーズは良いなあ。
だから、この小説はやはり動機につきる。もうその動機がとにかく派手。
静寂な寺での出来事なんだけどね。

39冊

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久しぶり

久しぶりに本を読んだ気がする。まあ、この6冊はここ2週間で読んだものですが

森見登美彦四畳半神話大系
使いまわ(ry
ようするに主人公と親友の友情物語でした。
どういう道に行ってもそんなに人生変わらないよってこと。

広瀬正『マイナス・ゼロ』
40年ほど前に書かれたにしてはものすごいいいSFだと思う。
今はタイムパラドックスシュレディンガー的な方向で好まれて解決されてるけどこういうのもいいよね。
なかなかに不遇な作家さんらしくて、集英社文庫から5冊ほど全集がでてるみたいなので、順次追っていこうかな。

近藤史恵『ガーデン』
同級生の女の子がベストミステリとして挙げてたのがすごく気になっていて、知ってから2年後ぐらいにやっと読んだ作品。
なんていうか心理描写がやばいね。ドロドロしていてなんだかもうこれはこれでかなり好きな感じ。
探偵役の役割というかなんというか結構斬新な気がした。醜い感情を見せつけられても平気な人推奨。
いや、割とこういう女性の汚い部分を見せられても平気な感じです。むしろピュアな汚れだよ、アレ。

高野和明『13階段』
死刑制度への疑問の提唱をけしかけている。でも一貫して中立的な立場で批判している。
ミステリとしてもよくできたお話で、宮部さんがプッシュするのもわかるっていうか宮部臭がするような作品。
かなり調べられているし、最後の締めの文章がよい。

瀬名秀明『八月の博物館』
なんていうかものすごい作品。結構言いたいことたくさんあるけどピックアップするなら、瀬名さんの博物館及び図書館への理解の仕方がすばらしい。
特に図書館に関わることをちょっとばかししている僕としては、図書館の使い方を知ってるなんてさすが研究者だなあと思う。
もう、知識が駆けめぐってる感じ。

白石かおる『僕と『彼女』の首なし死体』
新刊です。なかなかよかった。リーダビリティも良いし、主人公がなかなかに斬新で、あんなに自分を突き放してるのは見たことないなあ。
ぶっちゃけ動機は最初の方で思いついた、まさかな、ってやつだったし犯人もまあ、こいつだよねって感じだけど、最近読んだ新刊の中でいい方。そんなに読んでないけど。
無駄のように思える主人公の一流商社マン的なお話も、主人公の性格を示す大事なエピソードで、それがトリックにもつながるし、この小説の核とも言うべきものである。選者のうちの板東さんが主人公が紙のようなのが自意識過剰すぎって言ってたけど、まさにこの主人公は神にも近い=一人称でありながら、客観性を持ちすぎるという相反する属性を併せ持つというのが新しいと感じた理由かも。
ヒロインが婚約者もちのツンデレアラサーお嬢様というのもなかなか。(何がなかなかなんだか)

35冊

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青春×2と青春じゃないの

初野晴『1/2の騎士』
普通に良い作品。切ない感じのお話。青春もの。ていうかこの作者物語の構成の仕方がうまいわ。
ミステリーのトリック云々よりは青春的な方に目がいく作品。もうなんか青春としか言いようがない。

米澤穂信秋期限定栗きんとん事件 上下巻』
こちらも青春……なんだけど、主役二人の頭のねじがどっか緩んでるような。
小鳩君が彼女できて浮かれてるのを見て、リ○充め……って思ってみたり、小山内さんの間違った方向性を見て、ヤン○レの素質あるな……って思ってみたり。最後の最後で、小鳩君に、同作者の別シリーズの古典部の男子部員2人にかかった同じ病気が発症しそうなのを見てニヤニヤするのは僕だけでしょうか? まあ、古典部の折木君と小市民シリーズの小鳩君との共通点は、自分が持っていた(しかも中学生だかなんだかの幼い頃に形成された)アイデンティティをたたき壊される変換点に立ち会ってるところってとこですかね。うーん青春。

三津田信三『四隅の魔 死相学探偵2』
最後は青春じゃないもの。ホラー。
ミステリって本当スクエアの話好きですよね。
前作より全然整合性がとれているっていうか前作が破天荒にもほどがあった作品だから、逆にもっと冒険してみた方が、と思ってしまうのは何故なんだろうか。


29冊

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昔懐かし新本格

倉知淳『星降り山荘の殺人』

なんだか久しぶりに新本格っぽい新本格を読んだ気がする。
吹雪の山荘ものというお約束ミステリ。
なんていうか、そのシチュエーションを踏襲したっていうよりパロったっていうのが正解だと思う。
トリックはやかんのそれはなんだか本格本格してんなっと思ったけど、たぶんこの作品の中核をなすそれは懐かしさを感じるレベルの新本格っぽい感じでした。こう言うとやっぱり、もう新本格の時代って終わった感じがするよなあ……
最近のトリックトレンドは、物語に密接に絡んだそれだよなあ。

25冊

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すげえ仕掛け本とすげえ物理トリック

泡坂妻夫『生者と死者』
『しあわせの書』に次ぐかなり凝っている(かなりどころの話ではないが)仕掛け本。
これを書くのに要した労力はすごいもんだったんだろうな……
そして惜しい人を亡くしました。ご冥福をお祈りします。

村崎友『風の歌、星の口笛』
すげえ物理トリック。
話自体は、超SF。だけど、話のみせかた自体はかなりミステリ調。ということで、これは正直ミステリの方に偏っていると思うのでミステリだと思います。
この作品は第24回の横溝正史ミステリ大賞の受賞作らしいんですが、どこに正史の要素が入ってるのかと(以下略)
しかし、3人の主人公の視点から代わる代わる進むのは、人工惑星プシュケは何故滅んだのか、徐々に明かされていくのが良い感じだし、何よりこの物理トリック。大きな大きなトリックだなあ。

24冊

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わたしのベッキーさん

北村薫『街の灯』
再読。わたしのベッキーさんシリーズが後述する『鷺と雪』で完結するというので、1作目のこの作品を読み返してみた。
久々の北村先生の文章を読むと、なんだかいいなあ、と思ってしまう。雰囲気、雰囲気。
1年以上前に読んだので、色々と忘れているところも多かったり。しかし読み返して良かった。

『鷺と雪』
シリーズ完結作。とはいっても、そこまで明確な終わりがない。
いや、それが作者の目的でもあると思う。この作品は現代ではなく、昭和11年という第二次世界大戦が始まるわずか4年前。
そう、現代作品ならこれから何が起こるかなんてわからない。故に読者もその作品の登場人物の行く先など想像しにくい。
しかし、この『鷺と雪』では、主人公の英子がこれからの激動の時代を迎えるということを知っている。

あと、素晴らしいなあと思ったのが、第1作『街の灯』の「虚栄の市」で首相が暗殺されても、
「私の日常はこれといって変わったことはなかった」
という記述が出てくるのだが、最後のシーンに間接的に関わってきて、切ない余韻を残し終わってしまう。

これからの英子のことを考えると切なくなってしまうけど、それこそベッキーさんが言ったように
「《あのような家に住む者に幸福はない》と思うのも、失礼ながら、ひとつの傲慢だと思います」
こういうことでしょう。英子たちの生きていた時代に住んでいた人々は戦争という大きなうねりの中に巻き込まれて、現代の我々はかわいそうだとか哀れだとか思ってしまうけども、その時の人々にも幸福があった訳ですしね。
ともあれ、素晴らしい作品でした。


22冊

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