芸術×本格推理のクロスオーバー

おもしろかった。今年度の本格物の中でもかなりいいとこいくんじゃないんでしょうか? 芸術を主のテ−マとして、ミステリーと絡ませる試みは麻耶先生の『夏と冬の奏鳴曲』を思い出します。 まあ、本作品の方がわかりやすかったですが(キュビズムを主とした『…

ユーモアミステリー

文庫で読みましたが、いっこく堂と我孫子さんの対談が載ってて笑った。 作品に関しては、安心して読めるシリーズだなあ、と。 朝永と妹尾の恋愛の方がメインだからミステリ部分よりそっちの方が気になるからか。 サクサク読めました。残り46冊next 深水黎一…

単純娯楽作品の極み

伊坂作品の特徴として、用意周到な伏線が張られていることが挙げられるが、『ゴールデンスランバー』はその最たる例の作品だろう。 伏線とそれの回収だけでできているんじゃないか、と思わせるぐらい無駄がなく、スマートにできあがっている。 そして、単純…

報復絶倒のスラプスティックミステリ、永遠の恋

法月綸太郎『ノーカット版 密閉教室』 再読。カット版の方を2年前ぐらいに1回読み、どんでん返しの魅力に気づかせてくれた作品。 あの頃と今では、今の方がミステリーに関する知識は多少増えたから、法月さんが仕掛けたオマージュ部分に気づくことができた…

17歳でデビューした作者のデビュー作

16歳で執筆し、17歳の時に発表。今の自分よりも若いのに、なぜこんなにも文才があるのだろうか。 ここまで書ける高校生ってすごいなあ。(年代は違えども)他の高校生でデビューしたという作家の作品と比べても抜きんでている。 なにより、物語の締めくくり…

裁判員制度を用いた初めての本格ミステリ小説

裁判員制度。まあ、将来国民の誰かに降りかかってくるもの。 そういった制度に興味を持ち始めた人もそうでない人も読んでおもしろい作品だと思う。 まず、法廷ミステリの派生系である今作品では、推理の判断として法廷に差し出された証拠しか使ってはいけな…

ハードSF

SF特有の固有名詞の多さには辟易したけど、思ったより読みやすかったしおもしろかった。 真相のスケールの大きさは驚くしかない。 そして何より作者の学問の多角っぷりに一番驚嘆した。 何にでも精通してるなあ・・・・・・残り52冊next 芦辺拓『裁判員法廷』

国名シリーズ

有栖川氏の国名シリーズにおいても、なかなかよくできた作品だったと思います。 表題作の「モロッコ水晶の謎」はよくできた本格だったし、推理合戦も小ネタだろうけども、おもしろかったし。 国名シリーズはこれでマレー以外は読んだことになるのですが、今…

誰の時計か

至極まっとうな本格ミステリ。特に表題作の「スイス時計の謎」は久々に楽しめた本格中編だった。 作家アリスの意外な過去が明らかになる意味でも楽しかった。 つっこみようがない作品だなあ。矛盾がなくて。 安定して読める作家だ。残り54冊next 有栖川有栖…

ボーイ・ミーツ・ガール

500p弱の二段組みハードカバーの単行本で、すごく重たそうなタイトルなのに、意外と文章は軽かったのが印象深い。 こんなに悪魔とかホラー小説に詳しい中学1年生なんかいねーよというつっこみはさておき、いいホラー小説だなと思いました。 中盤のおすすめホ…

密室だらけの短編集とバカ

貴志祐介『狐火の家』 『狐火の家』は『硝子のハンマー』の続編で防犯屋と弁護士コンビが活躍する推理小説。 貴志祐介は推理小説よりホラー・SF寄りな人だけどこの人の書いた本格もなかなかよい。 さて、『狐火の家』は4つの短編からなる短編集なわけですが…

嗤われたら、終わり。

民俗学を巧みに物語に組み込ませ、それがトリックの中枢となるミステリーを得意とする三津田信三の刀城言耶シリーズ最新作。 山魔の出る忌み山で起こる不可解な密室事件が起こり、さらには連続殺人事件へと発展していきます。 前作の首無の〜の方が僕は好き…

壊れやすい凶器

おもしろかった、以上。・・・・・・というのもなんなので。 二部構成で、第一部は探偵がトリックを見破るところまで、第二部は一転して犯人の視点からの事件を描き、どう犯行がなされたのか明らかになります。犯人があんまり憎めなかったなあ。せっぱ詰まった人間…

僕たちは、幸せになった。

戯言シリーズ読了。 最後のネコソギラジカルはもはやミステリーじゃなくなってはいましたが、そんなの関係ねぇみたくのめりこんで読みました。 ヒトクイマジカルでは、まさかあのキャラが死ぬとは思わなかったなあ。 ミステリ部分はもはやどうでもいいよなあ…

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西尾週間。おもしろいですね。 ジョジョネタ使いすぎだろーというかだいたいわかる自分が怖い。 なんというか、シリーズとしてのおもしろさがあるなあ。 やっぱり語り部とデッドブルーの関係が不安定だから先が気になるんだろうなあ。 破綻がいつ来るのだろ…

バカミスの雄と戯言使い

鳥飼否宇『官能的』 おもしろすぎ、なんというバカミス。 探偵役がすばらしくひどい。そして最後の最後で明かされた真相もこれまたひどい。(褒め言葉) 霞的バカミスではなく6とん的バカミスでした。西尾維新『クビツリハイスクール』 前二作と比べると短…

人間失格です。ごめんなさい。

割とテンプレートに乗っ取っていた1作目に比較し、割と自由にしていた2作目。 西尾イズムというのでしょうか、語り部の信条は揺らぐことなく、それが事件の骨格をなしているなあと。 零崎って意外と事件部分には関わらなかったけど、彼の存在が語り部に考え…

彼らの成長

米澤さんの古典部シリーズの3作目、4作目を一気に読みました。 彼ら4人の視点から語られる文化祭の事件の描いた『クドリャフカの順番』。 そして、高校に入学してからの1年間を通し、少しだけ成長した彼らが見られる『遠まわりする雛』。 どちらもおもし…

全然気づかない

カバーに半分ネタバレのようなことが書かれていたけど、全然気づかなかった。 というか、あそこまで執拗に書き込めるのはすごいなあ。 最後の犯人の告白は説明的すぎたのがアイデア一発の小説だということを示しているな。 違和感がなさ過ぎて、解く材料が少…

足なんて飾りだってどこかの偉い人が言っていた。

ティーンにとても人気な西尾維新。 友人曰く、西尾維新がちゃんとミステリしているのは戯言シリーズの4作目まで― あとデスノートぐらい、と。ということで、ミステリーのトリックの発想としては、なかなか良かったように思います。 首を斬る論理の新しい可…

この人は天才だと確信した――

おもしろすぎる。最後の1行で笑わない人っているの? 相変わらず、料理の描写はおいしそうの一言に尽き、 ハサミ男で見せた王道っぷりはどこに行ったのかと思わせる荒唐無稽な話の展開―― 幕開けの場面から急速におもしろくなった。 石動は本当に名探偵だな…

ぐるぐる廻る謎、ぐるぐる回る

この作品に一番ふさわしい言葉は回転だと思う。 視点が交互に替わっていって、読者を困惑させどれが本当なのかわからなくなる。 まるで、回転椅子に座っているような気分だ。 東野さんの帯の紹介文は適切だ。 読んでいくうちに続きが気になって、すぐ読めて…

とある一族の悲劇

言わずもがなという海外古典名作。 探偵ドルリー・レーンの論理的な推理がこれでもかという風に決まるラストはすごい。 なぜマンドリンでなければいけなかったのかという疑問の答えはすごいなあ。 日本でもできるトリックかな?残り77冊next 黒田研二『ウェ…

ロジックではなくマジック。 圧倒的な知識量

ファンになってしまった。 駒子シリーズは北村薫の『私』シリーズと似ているのだけれど、やっぱり違う。 モラトリアムを描いてる作品が好きなのかもと思った。残り79冊殊能将之『美濃牛』いろいろな知識をペダントリーとして効果的に使用した作品。 横溝正史…

犯人も探偵も被害者も一生懸命です

このミス2位にもなった『扉は閉ざされたまま』の続編です。 倒叙ものです。しかし、そこはさすがといったところか、石持さん。 犯人&被害者vs探偵という珍しい構図になっています。 なぜなんだろう、普通は主人公と犯人の戦いは主人公側、つまり探偵側を応…

映画業界丸わかり?

バカミスキング、霞さんの新刊です。 自身初?といっていい短編集らしいです。 犯人がやけにあっさり罪を認めてお開きになるのが気になったけど、短編だし。 やっぱり動物がいるのがある意味すごいな、と思ってみたり。 え?死写室に動物の名前入ってないっ…

ようこそ。ここが、青春の終わりだ。

道尾さんはこれで二作目。 ミステリーとしてだけではなく、物語としてもおもしろかった。 ラットマンというのはネズミ男のことではく、心理学用語なわけですが、これがキーワードになります。 やはり、よかったのはラットマンをうまく使っていたことです。 …

驚くがいい、という帯どおり驚きました。 こんなにも登場人物に対して公平に扱われるとは。 久々に事件に巻き込まれるタイプの名探偵ものを読んだ気がする。 探偵が好きだな〜柄刀氏の密室キングダムを読む前にワンクッションを置きます。 理由は分厚いから…

ミステリーランド、これこそ子供向け。 スパイアクションもので氏にはあまり見られないような作風だったような気がします。 しかし、素晴らしい理路整然とした論理はさすがといったところ。 久々に、このような子供向けな、大人のドロドロとした世界が描かれ…

講談社のミステリーランドから出た麻耶先生の不条理ミステリー。 うん、子供向けのはずのレーベルなのにグロすぎる(笑) 猫の虐殺だとか、犯人だとか、最後の不条理さや、神様が言った彼の未来など色々精神的にきつい。 トラウマになるよなー、こんなの小学…